SNSで進む社会の分断。米国議会でGAFAが叩かれる真の理由

SNSで進む社会の分断。米国議会でGAFAが叩かれる真の理由

国民に広く均等に情報をもたらす仕組みが民主主義を支える

アメリカ大統領選挙の報道でもよく見聞きしますが、SNSによって民主主義が破壊されているとよく言われます。この民主主義の破壊とは、どのようなことなのでしょうか。

民主主義とは、社会の構成員が方針決定への参加資格(参政権)を持ち、全員で社会の在り方に責任を持ち、方針を決定していくための仕組みです。現代の国家においては、それが普通選挙により選ばれた議員によって構成される、議会による立法権の行使という形で行われることが一般的です(それに加えて、大統領制の国では、行政の長も選挙で選ぶこともあります)。

民主主義を支える教育と情報提供の仕組みを整備してきた近代国家

この仕組みの暗黙の前提とされているのが、社会の構成員が社会課題について十分な理解をすることができることです。具体的には、教育を一定水準以上受けていることと、判断に必要な情報が十分にかつ均等に与えられていること、だと思います。

そのため、近代国家は義務教育という仕組みを導入し、社会の構成員の質の均一化に努めました(日本が明治維新後に近代国家としての体裁をスムーズに整えられた要因の一つとして、江戸時代からの識字率の高さが指摘されるのはよく知られていると思います)。

また、国家による情報提供(究極的なものは「官報」になりますが、様々な媒体があります)や、新聞に代表される近代メディアによる様々な情報の周知により、社会の構成員に十分かつ均等な情報がもたらされるようになりました(構成員の側もそれを強く欲していました)。

正確な情報を均等に提供する仕組みとしてのマスメディア

ここで重要なのは、近代メディアにおいては、すべての構成員が同質の情報に触れることになる(「マス」メディア、と呼ばれる所以ですね)ことから、同じ情報を基にして政治的な判断を各構成員がすることができる、十分な相互理解の上での意見交換や意思決定ができる状態が実現していた、という点だと思います

確かに新聞社によって多少の論調のずれはありますが、プロフェッショナルの記者が収集した情報を基に、組織によるスクリーニングを経て出てきた情報であれば、(もともとの情報源が共通である場合も多いでしょうし、)同質の情報と言ってしまっても問題ないのではないかと思います。

SNSによって社会の分断が進み、危機に瀕する民主主義

不正確で偏った情報でしか判断せざるをえなくなった人々

ではSNS時代ではどうでしょうか。SNS上には、個人の意見や極端な意見、出所が不明な情報などが多様に存在します。極端な意見には人を引き付ける力もあります。また、新聞社などの組織によるスクリーニングがされていない情報も多く、そのことがこれまでの世の中のタブーや常識を打ち破る斬新なもの、という価値を持つ場合もあるでしょうが、多くの場合にはその信ぴょう性に疑問符が付くものなのではないでしょうか(報道のプロフェッショナルの仕事はもっとリスペクトされるべきだと思っています)。

他方で、一人の人間が処理できる情報の量には限界があり、SNS経由の情報に興味関心が惹かれていく人が増えると、必然的に既存のマスメディア経由の情報はその存在感が低下します。そうすると、人々がそれぞれ自分の行動によって集めた情報の内容が、これまでよりも多様になってくることになります。似たような思想や信条の人たちのところには、似たような情報が集約され、全体として共有されるような、判断の土台となるべき情報の層は薄くなっていきます。

「部族化」が進み、操られる民主主義

「操られる民主主義 デジタル・テクノロジーはいかにして社会を破壊するか」という、英国のジャーナリストが書いた本においては、このことを「部族化」と呼んでいます。特定の主義主張を信奉する部族のような集まりが形成され、その代表者としてその部族に有利な発言や行動をする部族長のような人たちが跋扈する。その人たちは、真実とは何かということには関心はなく、部族の利益になることであればフェイクでも活用し(無批判的に信じている場合もあるでしょう)、部族のひとたちを守る。その大物の一人がトランプ大統領であるといえば、その行動にイメージがつくでしょう。

部族による行動原理が影響力を増すと、一人一票の投票権の意義が薄くなってきます。部族間の力関係によって社会の状況が左右されてしまうからです。また、統一的な議会や政府などの国家権力機構も、より多くの人を納得させようと説明責任を果たそうとしますが、部族での視野に縛られている人々にはその情報が正確に届きません。そうすると代表性を失ってしまった議会での議論には意味がなくなってきます。また、トランプ大統領のように、特定の部族の長が国家権力を握ると、その部族の方だけを見た政治をします。そうして社会は分断の度合いを増していくのです。

民主主義の崩壊を防ぐためには

GAFAを叩くことで民主主義を守ろうとしている米国議会

このように、SNSによる多様な情報が、既存の民主主義体系に対して破壊的な影響をもたらすことから、米国議会がGAFAを敵対視することにもつながってきます。米国の政治家は、自らが信じている議会制民主主義の価値を棄損されることを防ぎ、これまで積み重ねてきた国の在り方を守ろうとしているのだと感じます。

SNSと民主主義が共存できる社会の実現へ向けて

これを防ぐには、健全な議論に基づく合意形成の尊重、というもともとの理念に立ち返らなければなりません。ただ、SNSの活用を今更止めることは非効率です。

投票により議員を選ぶという仕組みの再評価や、政策によって政党を結成し活動の単位となるという発想の見直し、テクノロジーを活用した直接民主制の活用方策の検討、SNS経由で流れる情報を個人がより見極められるようにするためのサポートの在り方など、考えるべきことはたくさんあります。

SNSと民主主義をどのようにマッチングしていくのか、ここが現代の政治家に問われている最大の課題の一つと言えるでしょう。

おすすめの本

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