クラウド会計ソフトを提供するIntuit。アメリカで圧倒的なシェアを誇るIntuitの今後の成長性は?

クラウド会計ソフトを提供するIntuit。アメリカで圧倒的なシェアを誇るIntuitの今後の成長性は?

Intuitは、1983年に創業した会計ソフト会社です。もともとはソフトウェアを店頭で販売する会社でしたが、現在はクラウドベースでサービスを提供しています。Intuitは、アメリカで圧倒的なシェアを誇り、成長を続けている企業です。

今回は、Intuitの収益構造と業績をレビューして、Intuitの成長性について考えていきます。

会社の成長性と収益性から、A~Dにランクして評価していますので、参考にしてみて下さい。

A~Dの評価の基準は以下の通りです。

A:高成長企業(利益率を維持しながら、しばらくは成長率30%以上を継続できそうな会社)

B:安定成長企業(利益率を維持しながら、しばらくは成長率10%~30%以上を継続できそうな会社)

C:成熟企業(利益率を維持できるが、成長率一桁台(10%未満)が続きそうな会社)

D:衰退企業(売上の減少や利益率の減少などで低迷しそうな会社)

Intuitの評価は「B」

Intuitの顧客は、中小企業・個人事業主、個人、会計士・税理士の3つのカテゴリーに分かれます。主な収益源は、中小企業・個人事業主と個人向けのサービスです。

Intuitは、日本での弥生会計、freeeやマネーフォワードと同じようなサービスを提供する企業とイメージして頂ければわかりやすいかもしれません。

Intuitの成長性について見てみましょう。

Intuitの2018年7月期の売上高は、前年比15.2%増の5,964百万ドル(約6,400億円)となりました。3年前の2015年7月期は会計手法の変更と、プロダクトの移行期でもあり、マイナス成長になりましたが、その後は安定的に売上高を伸ばしており、過去3年間、毎年10%以上の成長率を続けています。

Intuitは、アメリカで圧倒的なシェアを誇りますが、それでも個人ユーザー数は約4千万人、中小企業・個人事業主のユーザー数は約450万です。
アメリカの人口は3億人以上、中小企業数は約2千万社、個人事業主は5千万人いると言われており、まだまだ利用者が増加するポテンシャルがあります。

特に中小企業・個人事業主向けのポテンシャルはまだまだありそうです。Intuitの中小企業・個人事業主の利用者数はここ数年間毎年20%以上も増加しています。

個人向けについても増加していますが、成長率は1桁パーセントで推移しています。

過去のユーザー数の伸びの実績、今後の拡大のポテンシャルを踏まえると、中小企業・個人事業主向けサービスがIntuitの成長をけん引し、年間10%以上の売上成長率は当面維持できるのではと思います。

次に、収益性を見てみましょう。

Intuitの営業利益率は、ここ3年間25%以上を安定的に維持しています。

また、稼ぐ力を表す実質営業キャッシュフローも、安定的に増加していて、稼ぐ力を着実につけてきています。

Intuitにも競合はいて、将来的により厳しい競争を強いられる可能性は否定できません。ただ、最大の競合と目されるニュージーランド企業のXEROの全体の売上は、まだIntuitの売上の10分の1程度で、XEROのアメリカでの売上はIntuitの売上の1%にも満たない水準で、Intuitの成長や収益性を脅かす存在とは言えないですね。XERO以外にも、Intuitの競合サービスを提供している会社はありますが、Intuitの成長や収益性を脅かすほどではなさそうです。当面は圧倒的なシェアを背景に、安定的に稼ぐことができると考えています。

ということで、
Intuitの評価は、「B」です。

評価B:安定成長企業(利益率を維持しながら、しばらくは成長率10%~30%以上を継続できそうな会社)

IntuitをB評価にした理由は、以下の3点です。

  • Intuitの成長と収益性を脅かすほどの競合企業が見当たらない
  • 10%以上の売上成長が見込める
  • 稼ぐ力を着実につけてきていて、収益性を維持できる可能性が高い

ここからは、Intuitの収益構造、業績を解説していきます。

Intuitの事業内容と収益構造

Intuitの2018年7月期の決算内容を見ながら、Intuitの事業内容と収益構造について見てみましょう。

Intuitの事業内容

Intuitは、一言で言うと、会計ソフトを提供している会社です。日本での弥生会計、freeeやマネーフォワードと同じような会社と考えて頂ければわかりやすいと思います。

Intuitの創業は、1983年です。当時はインターネットもなく、会計ソフトは、家電量販店などの店頭で販売するスタイルでしたが、インターネットが普及し、サービスの提供方法も変わっていく中で、現在ではクラウドサービスが主流になっています。

Intuitの顧客は、中小企業・個人事業主、個人、会計士・税理士の3つのカテゴリーに別れます。提供しているサービスも、それぞれで異なっていて、中小企業・個人事業主向けにはquickbooks、個人向けにはTurboTax、会計士・税理士向けにはproconnectを主に提供しています。

中小企業や個人事業主は、quickbooksを使って、自社の決算や税務申告を行うことができ、TurboTaxは個人が確定申告するときに利用します。会計士・税理士向けのproconnectは、顧客への税務サービスなどを行う会計士・税理士向けに開発されたサービスです。

Intuitの収益構造

Intuitの収益構造を以下の通りまとめてみました。

Intuitの主な収益は、企業・個人事業主向け、個人向けサービスからで、全体の9割以上の売上、利益を企業・個人事業主向け、個人向けサービスから得ています。

売上では、企業・個人事業主向けが最も割合が大きく、全体の5割を占めています。一方で、企業・個人事業主向けサービスの利益率が個人向けよりも低く、利益では、個人向けが全体の5割、企業・個人事業主向けが全体の4割を占めています。

ちなみに、企業・個人事業主向け利益率が低いとは言っても、利益率は42%です。個人向けの利益率は63%ですので、むしろ個人向けサービスの利益率がかなり高いですね。

会社全体で見ると、事業セグメント全体の利益率は52.5%で、全社コスト(バックオフィス関連の費用や、全社ベースの商品開発やマーケティング活動などの各セグメントに分けられないコスト)を差し引いた営業利益率は25.1%でした。

過去3年間の営業利益率も25%を超えています。かなり高い営業利益率を維持できています。

以下のグラフは、Intuitのサービス別の売上高の推移です。過去3年間、全ての事業セグメントで売上が成長しています。

成長率を見ると、企業・個人事業主向けが高く、2017年7月期は14%、2018年7月期は18%成長しています。個人向けも成長しており、2017年7月期は8%、2018年7月期は14%成長しています。一方で、会計士・税理士向けの成長率は、他の2つのセグメントに比べると成長率は低く、2017年7月期は2%、2018年7月期は4%でした。

Intuitの最近の動き

ニューヨーク金融監督局が調査を開始

Intuitは、個人の確定申告用ソフトウェアのTurboTaxに関して、米国国税局(Internal Revenue Service)と協議し、年収が6万6千ドル(約7百万円)未満の人は、TurboTaxを無料で使えるようにすることで合意しました。

一方で、Intuitは、無料版を見つけにくいようにして、無料でTurboTaxを使える人でも、有料版を使うように誘導しているとのことで、2019年5月にニューヨーク州金融監督局がIntuitに召喚状を送付するなど調査を開始しています。

アメリカはオバマ政権時代に、消費者保護を目的に、消費者金融保護局(Consumer Financial Protection Bureau)が設立され、金融機関への監督を強化してきました。数多くの金融機関が、消費者金融保護局や州の金融監督局からの調査を受けて、数百億円の罰金を支払うことになった銀行も多数あります。

今回のニューヨーク金融監督局による調査で、Intuitにも罰金の支払うことになるかもしれません。

AIへの取り組みを強化

Intuitの初期のサービスQuickenは、家電量販店などで販売する商品でした。その後、インターネットの普及とともに、IntuitはWebベース、クラウドベースのサービスにシフトしました。

その流れの中で、同社は、Web・モバイル系サービスのMint(家計資産管理ツール)やCheck(請求書支払ツール)の買収を進める一方で、同社のコアプロダクトでなくなってきていたQuickenを2016年に売却し、技術革新、時代のニーズに合ったプロダクトを提供できるようにシフトしてきました。

Intuitは、現在AI(人工知能)についての取り組みをより強化しているようです。同社サービス、プラットフォームへのAIを導入し、会計データ分析などのサービスの質をさらに高めようとしています。

直近では、データ分析プラットフォームを開発するOrigami Logicを買収すると発表しており、自社による開発とともに、M&Aも行いながら、サービスの質の向上へ向けて積極的に取り組んでいます。

Intuitの最大の競合と目されている企業

Intuitは、アメリカで圧倒的なシェアを誇り不動の地位を築いていますが、新たなサービスが対応して、Intuitからシェアを奪う可能性はあります。

現在、最大の競合と目されている企業は、ニュージーランドのXEROという企業です。XEROはIntuitと同様に、クラウドベースでの会計ソフトの販売を行っています。

売上自体は、Intuitの10分の1程度の規模ではありますが、直近の年間売上成長率は36%とかなり高く、Intuitの競合として躍進する可能性を秘めています。
すでに書きましたが、アメリカでの売上はIntuitの1%程度でもありますので、競合として恐れられるレベルになるには、少し時間がかかりそうです。

Intuitが売上の95%以上がアメリカに集中しているのに対して、XEROは豪州とニュージーランドをベースにしながら、世界的に展開を進めている点が特徴です。

利用者数は180万人。年間で40万人以上も利用者が増加しており、今後が期待されています。

安定的に10%以上の成長率を維持しているIntuit

Intuitの直近の年間売上成長率は、15.2%でした。2015年5月期は、会計手法の変更があったため、減収となっていますが、直近の3年間は、10%以上の成長率を安定的に叩き出しています。

Intuitは、2015年7月期の売上減少は、会計手法の変更によるものとの説明ですが、後ほど説明する通り、キャッシュフローも少し減少しており、この年は事業自体も少し振るわなかった年でした。

もともとの主力商品だったQuickenの売却交渉を本格的に進め始めた年で、ソフトウェアの販売から、クラウドベースへの移行期にあたる年でもありました。

2016年にQuickenを売却し、その後は、クラウドベースのプロダクトを中心に安定成長を遂げており、プロダクトミックスの入れ替えに見事に成功しています。

Intuitは、30年以上の歴史のある会社ですが、時代に合わせてプロダクトを変更しながら、成長を続けているあたりが、この会社のすごさですね。

安定的に25%以上の営業利益率を確保

Intuitの2018年7月期の営業利益は1,503百万ドル(約1,600億円)、純利益は1,211百万ドル(約1,300億円)でした。

営業利益率は25.2%と、過去3年間、安定して営業利益率25%以上を継続しています。

実質営業キャッシュフローは右肩上がりに増加中

営業キャッシュフローから運転資金の増減を除いた実質営業キャッシュフローの推移を見てみます。

2015年7月期は、前年に対して実質営業キャッシュフローが落ち込んでいます。営業利益ほどの落ち込みではないにしろ、この年は少し芳しくない年だったようです。

一方で、その後は順調に実質営業キャッシュフローが増加しており、2018年7月期の実質営業キャッシュフローは1,982百万ドル(約2,150億円)と、前年から28%も増加しています。

稼ぐ力が着実についてきていることがわかります。

自社株買いを積極的に行うIntuit

Intuitのキャッシュフローを見ると、投資キャッシュフローが少ない一方で、財務キャッシュフローがかなり大きいことがわかります。

Intuitは、それほど多額の投資をしなくても、成長できる好循環に入っています。

Intuitは、稼いだお金で、自社株買いを毎年行っています。この辺りアメリカの企業ですね。自社株買いを行うことで、株価を上昇させようとしています。

2017年7月期までは、かなり多額の自社株買いを行ってきていましたが、2018年7月期は、金額がかなり減少し、現預金が増加しました。

2019年5月にOrigami Logicを買収しました。Intuitは、買収を想定して現預金を貯めてきているのかもしれません。

Origami Logicの買収額は明らかにされていませんが、Origami Logicだけでなく、更なる買収を検討しているかもしれません。もしかしたら、最大の競合のXEROの買収もありえるかもしれないですね。

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